。女から病気を受けたら、それどころではない。子孫にまで禍《わざわい》を遺《のこ》すかも知れないなどとも思って見る。先ず翌日になって感じた心理上の変動は、こんなものであって、思ったよりは微弱であった。そのうえ、丁度空気の受けた波動が、空間の隔たるに従って微《かす》かになるように、この心理上の変動も、時間の立つに従って薄らいだ。
 それとは反対で、ここに僕の感情的生活に一つの変化が生じて来て、それが日にましはっきりして来た。何だというと、僕はこれまでは、女に対すると、何となく尻籠《しりごみ》をして、いく地なく顔が赤くなったり、詞《ことば》が縺《もつ》れたりしたものだ。それがこの時から直ったのである。こんな譬は、誰かが何処《どこ》かで、とっくに云っているだろうが、僕は騎士としてdubを受けたのである。
 この事があってから、当分の間は、お母様が常に無い注意を僕の上に加えられるようであった。察するに、世間で好く云う病附《やみつき》ということがありはすまいかとお思なすったのだろう。それは杞憂《きゆう》であった。
 僕が若し事実を書かないのなら、僕は吉原という処へ往ったのがこれ切だと云いたい。しか
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