来る。ところが僕は酒が飲めない。安斎も飲めない。霽波が一人で飲んで一人で騒ぐ。三人の客は、壮士と書生との間《あい》の子という風で、最も壮士らしいのが霽波、最も普通の書生らしいのが安斎である。二人は紺飛白《こんがすり》の綿入に同じ羽織を着ている。安斎は大人しいが気の利《き》いた男で、霽波と一しょには騒がないまでも、芸者と話もする。杯の取遣《とりやり》もする。
 僕は仲間はずれである。その頃僕は、お父様の国で廉《かど》のある日にお着なすった紋附の黒羽二重のあったのを、お母様に為立て直して貰って、それが丈夫で好いというので、不断着にしていた。それを着たままで、霽波に連れられて出たのである。そして二尺ばかりの鉄の烟管《きせる》を持っている。これは例の短刀を持たなくても好くなった頃、丁度|烟草《たばこ》を呑み始めたので、護身用だと云って、拵えさせたのである。それで燧袋《ひうちぶくろ》のような烟草入から雲井を撮《つま》み出して呑んでいる。酒も飲まない。口も利かない。
 しかしその頃の講武所芸者は、随分変な書生を相手にし附けていたのだから、格別驚きもしない。むやみに大声を出して、霽波と一しょに騒いで
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