点ぜし街燈に映じたり。いろいろの異様なる衣《ころも》を着て、白くまた黒き百眼《ひゃくまなこ》掛けたる人、群をなして往来《ゆきき》し、ここかしこなる窓には毛氈《もうせん》垂れて、物見としたり。カルルの辻《つじ》なる『カッフェエ・ロリアン』に入りて見れば、おもひおもひの仮装色を争ひ、中に雑《まじ》りし常の衣もはえある心地《ここち》す。みなこれ『コロッセウム』、『ヰクトリア』などいふ舞踏場のあくを待てるなるべし。」
かく語る処へ、胸当《むねあて》につづけたる白|前垂《まえだれ》掛けたる下女《はしため》、麦酒《ビール》の泡だてるを、ゆり越すばかり盛りたる例の大杯《おおさかずき》を、四つ五つづつ、とり手を寄せてもろ手に握りもち、「新しき樽《たる》よりとおもひて、遅《おそ》うなりぬ。許したまへ」とことわりて、前なる杯飲みほしたりし人々にわたすを、少女、「ここへ、ここへ」と呼びちかづけて、まだ杯持たぬ巨勢が前にも置かす。巨勢は一口飲みて語りつづけぬ。
「われも片隅なる一榻《いっとう》に腰掛けて、賑はしきさま打見るほどに、門《かど》の戸あけて入《い》りしは、きたなげなる十五ばかりの伊太利栗《イタリ
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