うたかたの記
森鴎外

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)獅子《しし》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)美術|諸生《しょせい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)※[#「※」は「王+連」、第3水準1−88−24、39−8]
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     上

 幾頭の獅子《しし》の挽《ひ》ける車の上に、勢《いきおい》よく突立ちたる、女神《にょしん》バワリアの像は、先王ルウドヰヒ第一世がこの凱旋門《がいせんもん》に据《す》ゑさせしなりといふ。その下《もと》よりルウドヰヒ町を左に折れたる処に、トリエント産の大理石にて築《きず》きおこしたるおほいへあり。これバワリアの首府に名高き見ものなる美術学校なり。校長ピロッチイが名は、をちこちに鳴りひびきて、独逸《ドイツ》の国々はいふもさらなり、新|希臘《ギリシア》、伊太利《イタリア》、※[#「※」は「王+連」、第3水準1−88−24、39−8]馬《デンマーク》などよりも、ここに来《きた》りつどへる彫工《ちょうこう》、画工数を知らず。日課を畢《お》へて後《のち》は、学校の向ひなる
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