どうすればいいんだといっても、ただ泣いてばかりいて、自分の手では始末がつかぬと言うのである。
「それ、何時頃だか。」
「十時か十一時頃――」
「赤玉飲ませたか」とおせきはせかせかと言い放った。
「飲まねえもの、――袋から出して飲ませべと思っても、ぽき出してしまって。」
「仕様《しよう》ねえ餓鬼だな。――何か食わせやしなかったのか、李でも。」
「食わせっかい、俺ら、なんにも。」
「連れて来ればよかったんだ。」おせきは叱りつけるように言った。「この忙しいのに、痛えたってしようあるもんか。なんで連れて来ねえんだ。」
「だって、おっ母さんは……たアだ転げ廻っていて、何といってもかんぶり[#「かんぶり」に傍点]振るだけなんだもの。」
おさよはそう言って不服そうに黙った。
「腹ぐれえ何でもねえ、わざわざ知らせに来っことあるもんか、馬鹿。」
浩平も言って起ち上り、のっそりと、みんなをあとに組合さして出かけて行った。準備だけ出来ても肝心の肥料が来ないのでは、全く骨を折って植えるせい[#「せい」に傍点]はなかった。実際、彼は気が気でならなかった。黙って突っ立っていたおさよは、そのあとからぷすんと、も
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