犬田卯

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)鋤簾《じょれん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)体温|計《はか》って

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)かぶり[#「かぶり」に傍点]を振って
−−

     一

 三間竿の重い方の鋤簾《じょれん》を持って行かなければならぬ破目になって、勝は担いでみたが、よろよろとよろめいた。小さい右肩いっぱいに太い竿がどっしりと喰いこんで来て、肩胛骨《けんこうこつ》のあたりがぽきぽきと鳴るような気がする。ばかりでなく二足三足とあるき出すと、鋤簾の先端が左右にかぶり[#「かぶり」に傍点]を振って、それにつれて竹竿もこりこりと錐をもむように肩の皮膚をこするのだ。勝は顔中をしかめながら亀の子のように首をすくめて、腰で歩いた。
「愚図《ぐず》々々しているから、そんなのに当るんだで。」
 あとから軒先を出た母親のおせきが見かねるように言って、そのよたよたした勝の恰好に思わず微笑した。
 軽い方の鋤簾は、股引を穿《は》いたり手甲をつけたり、それからまた小魚を入れるぼて[#「ぼて」に傍点
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