女のこれまでの経験からすると、四五日などといったって、それは半月であるか一ヵ月であるか分らなかった。
「ほんとに何ちう組合だっペ。」そのとば尻を、おせきは何時ものように浩平に持って行かなくてはいられなかった。
「お父ら、暢気もんだから……米の調べあるっちのに、どうするつもりなんだ。」
「どうするっちたって、どうもこうもあるもんか。――無《ね》えものは無え、有るものは有る、横からでも縦からでも調べた方がいいやな。こちとらのような足りねえ者には、政府の方で心配して、何俵でも廻してよこすんだっペからよ。」
「そんな無責任な親父だ。そんで、どうしてこの一家、立派に、ひとから嗤われねえように張って行けるんだ。あすこの家にはたった一俵しかなかったとよ、なんて世間に言われるの、黙って聞いていられんのか、この間抜け親父奴。」
おせきは近所に聞えるのを恐れてそれ以上言わなかったが……
そうしているうちに、とうとう調査の日がやって来てしまった。が、彼女はその前日から覚悟をきめたようだった。土間の隅に積んであるいろいろながらくた[#「がらくた」に傍点]や、古俵、叺……そんなものをきちんと整理して、それか
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