ら軒下の方までおさよと勝に掃除をさせ、浩平が野良へ出てしまったあと、自分で、調査員のやって来るのを待っていた。
昼近い頃、村長と巡査、農会の書記、それからこの部落の区長とが、ぞろぞろと門口を入って来た。
土間から軒下へ出て一行を迎えたおせきは、丁寧に被っていた手拭をとって、
「これはまア、本日はご苦労さんでございます」と改まった東京風の言葉で挨拶した。
「いい日だなア。」
区長が半白の頭を見せてそれに答え、それから一行のものは、あるいは軒下に立ち、あるいは土間へ入って来て、じろじろとあたりを見廻した。おせきは少々上り気味で、誰と誰がどこに突っ立っていて、誰が米俵の方を注視していたか、そのときは識別しなかったが、あとで考えると、「米は何俵あったかね」と訊ねて、俵の方へ近づいたのは農会の書記――見知らぬ若者だったと思った。
そう訊ねられて、彼女は胸を落ちつけ、そしてはっきりと答えたつもりだった。
「はい、あの、六俵半……不合格も合せれば、ざっと七俵はございます。」
「え、四俵――」
「七俵って言ったんだど」と、それまできょとんとして眺めていた勝が訂正した。
「どれとどれだね。」
「
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