か魂胆がありそうだった。おせきの胸にそれがはっ[#「はっ」に傍点]と応えた。もっともそれは彼女にとって前夜来のまだ解けぬこだわりの故だったかも知れぬ。何となれば浩平は、おせきがいくら訊ねても肥料のことについては深く言わず、触れられることを嫌うので、反対におせきはますます追求せざるを得なかったのである。産組からは、穂が出てしまった頃しかやって来まい、勢い他で手に入れなければ、おめおめと素田を植えなければならぬ。そんな分りきった理窟ばかりこねていて、肝心の塚屋のことを少しも口にせず、ただ、とにかく十五貫入りの配合を十五叺だけ都合できたから、明日は植付だ、植付だ。とその植付だけを強調する……どこで都合したのだ、まさかやみ[#「やみ」に傍点]の高いものを手に入れたわけではあるまい。とさらに追求すると、そんなでご助[#「でご助」に傍点]に俺のことが見えるのか、八文銭でも天宝銭でも、とにかく身上切り盛りしている以上、そんなまね[#「まね」に傍点]はやれたってしないし、たといやったにせよ、嚊《かかあ》らに責任はもたせぬ、というようなことを言って、てんで寄せつけようとしないのであった。
おせきも眠い
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