でこぼこ」に傍点]顔を思いきりにこにこさせて、
「お通姉にも似合わねえ、そんな愚痴、……今日は俺さまが奢るから、さア、早く支度しろ。」
「売れ残りら三人で来た、あれ、見ろ……なんてひやかされるばかしだから、俺、やだ、お前ら二人で早く行け。」
「みものだわよ、どれを取っても十銭均一、なんて正札ぶら下げて行くのも。」
これはお民である。
二人の友達は、どんなことがあってもお通を連れ出さなければ承知しないというように縁側へ並んで腰をもたせかけた。そして話は彼女らがあの日……お通が蟇口を失くした「間のわるい日」に、どんなものを町で買って来たかに落ちて行った。お梅は本絹[#「本絹」に傍点]の帯を一本買ったというし、お民はまたこれも本絹[#「本絹」に傍点]の御召を一反買ったといってはしゃいだ。本絹も本絹「材木から取った本絹よ」でお通の「毒気」を抜き、それから自分たちがいくら丹精して蚕を飼っても、その蚕から取った本絹の着物など夢にも着れない現状を、げらげらと明けぱなしでけなすのであった。
お通もいっしょに笑っていたが、ふと口を切った。
「あれ、まだ残っているか知ら。お前ら見なかった……」
娘
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