ままだが、今日をすぎると子供に拾われる恐れがありますな。……まア草摘みにでも出た子供が見つけるというような寸法でしょうな」というのであった。
 見料はときくと、一円だというので、お通は母から今の今もらったばかりの第二の五十銭玉二つをそのまま置いて、それから子供らに拾われてしまっては大変と思って、国道へ引かえし、暗くなるまで一人で探し廻った。が、それも無駄骨に終ったので、その翌日、またしても国道の枯草を引っ掻き廻した。
「家から半里……きっとこの辺に違いない。」
 両手は朝露にぬれ、足も枯草と泥に汚れて、もはや血眼の彼女は、人に見られてもかまわず、野ばらの蔓の中まで掻き分けた。
「何だか、そんなとこで……」とわざわざ自転車を下りて訊ねる見知り越しの人もあった。
「蟇口失くしたんだ」と彼女は判然と答えるのであった。

     四

 野良仕事など容易に手につかなかった。彼女はもう近所の人にも公然と言明して、こないだの道筋を探しに探し廻ったが、いぜんとして発見できなかったので、今度は二里もある沼向うの村の占い師を訪ねてさらに一円の見料を払ったのであった。ところでこの道楽で易など見ているんだ
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