のもなかった。学校がえりの大きな連中をつかまえて聞いてみても、結果はついに同様でしかなかった。おそらく誰も知らない間に自転車ででも通りかかって拾って行ったのかも知れない。お通は訊ねるのをあきらめて、とにかく明日まで様子を見ることに決心した。籠屋のいうように、拾ってはみたが使いようがなくて、そうっと戻しにやってくるかも知れぬ。
 しかし、それもついに空頼みに終った。翌くる日もすぎ、四日目になったが、依然として金は出て来ない。
「あれにかんがえてもらえな、地神さまに。」
 母親が言い出した。あまりにがっかりしてしまっている娘が可哀そうだったのだ。
 そこでお通は沼沿いの丘の下へどこからか漂着して住んでいる山伏のような「地神様」と村人がよんでいる方位師のところへ行って見てもらった。と、この天神ひげを生やした痩せぽちの老人は、まず筮竹をがらがらとやって算木をならべ、それと易経とを見くらべながら、「うむ……うむ……」とうなっていたが、だいたい籠屋のいったように、日が悪かったことから説き出して、さて、
「この失せものは南の方、家より半道ほどの枯草の中に落ちています。今日中は誰の眼にもとまらず、その
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