。」
「でも、悪い日だなんて言われると、怖くなって何も出来なくて困ることもあるんだねえかしら。」
「そんな人は九星にとっつかれている人で、九星の吉凶というのはそんな意味だねえよ。悪日というのは気をつけろっちうことなんだから。」
そう聞くとお通はなるほどと思った。それから失くした金は二三日中には必ず出ると繰りかえし卦のことを言われてすっかり喜んでしまった彼女は、帯の間から白紙につつんだ五十銭玉二つを出して、
「あの、いくらですぺね。」
「あ、それは、なアに、思召しでいいんだよ。何もこれ、商売ではねえんだから。」
「ではこれだけでいいかしら。」
「なアに、半分でいいから。」
口だけで、別に押してかえそうともしないので、お通は惜しかったが二つをそのまま置いて戸外へ出た。
家へかえって話し、それから彼女はいつものように往還で遊んでいる子供らに、昨日、隣り村の誰かが遊びに来はしなかったか、姿を見かけたものはなかったかと訊ねてみた。子供らはぽかんとしていて答えるものがいない。「あいよ、昨日の九時頃よ、あれは……要三は、菊一は、佐太郎は……」しかし一人として来たというものも姿を見かけたというも
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