と、母親が寝ている枕もとからぼろけた財布をひっぱり出して五十銭玉を二つ畳の上へならべ、占い者にかんがえてもらって来たらいいだろうというのであった。
「無駄だわ、そんなこと――」
 お通はそっぽを向いたが、無論あきらめてしまったわけではなかった。いや、考えれば考えるほど諦めきれず、これからもう一度探して来ようと思っていたところだったので、「どうせ、あたりもしめえ」と重ねていって見た。
「当るか当らねえか、それは分らねえが、ひょっとして当るかも知れねえからよ、それが八卦だねえの。」
「あたらなかったら、ただ銭うっちゃるようなもんだしな。」
「それではお前のいいようにするさ。でも、一文なしではしようあるめえから、とにかく何に使うばって、その銭はとっておけな。」
「駐在所へだけは届けておこうかな。」
 彼女はそう言いながら起ち上る拍子に畳の上の五十銭玉二枚をつかんで掌に入れていた。
 村の巡査駐在所は隣部落――お梅やお民らの近くにあった。お通は昨日の道筋をさらに丹念に探してから駐在所の方へ急いだ。と、どこかへ出かけようとする巡査が自転車で先方からやってくるのに出遇ったので、それをよび止め、紛失
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