も流れてゆくのが落ちという運命にとりつかれているのかも知れなかった。
 それにしても、どこに自分は欠陥があるのだったろう。人並みに物も考え、他人のいうことも分らなくはないつもりだった。非常な醜女であるとか、どこか脚でも曲っているとか、そういう肉体的な不備でもあるのだったろうか。いや、たとえばいっしょにお風呂へ入ったようなとき、朋輩の誰彼とくらべて見ても、どこに足りないところもないし、よけいなところもなかった。皮膚に白い黒いはあっても、それが嫁入口に障るようなものではなかったし、容貌の点については、彼女は自分がお梅さんやお民さんに比して決して劣りはしないと自信していた。
 だのに……自分はいわゆるぼんやり者、抜け作の部類に属するとしか考えられぬ。そうだわ、だから血の出るような思いをしてこしらえた金も失くしてしまうのだし、お嫁の話もかけてくれ手がないのだ。
 うとうとしたと思うと母親に起された。喘息がよけいに嵩じてしまって、朝飯の支度が出来かねるというのである。お通は眼をこすりながら起き出して、いつものように竃の下へ火をたきつけた。
 やがて朝食後、兄貴が鍬をかついで麦さく切りに出てしまう
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