立っているのをぼんやりと認めた。
「あら、鼻血が出てるわ……まあ……」
一人の女生徒がびっくりしたような声で言った。彼女は袖から塵紙を出した。そして圭太の顔へかがみかかって、ぬらぬらする鼻の下や口のあたりを丁寧に拭ってくれた。
「怪我したんじゃないの? 圭太さん。」
女の子はしげしげと見守った。
圭太は眼を開いてあたりを見た。それからひりひりする足くびを手で抑えた。
「あら、そこからも血が……」
「大丈夫! これくらい……」
圭太はかくすようにくるりと起き上って、ぱたぱたと埃をたたいた。
橋の中央だった。彼は駈け出したまでは知っていたが、あとのことは全然知らなかった。さぶちゃん達はどうしたのだろう。いまは一人も姿を見せなかった。おそらく誰か先生にでも見つかって逃げてしまったにちがいない。
「鼻血がまだ止らないんだないの……圭太さん、これ詰めておかなけゃ駄目だど。」
女の子は再び塵紙を丸めて、自分から圭太の鼻へ栓をしてくれた。
柔かい手が彼の肩にかかり、頬のあたりへかすかにそれが触れるのだった。圭太は恥しそうに身をよけようとした。
「さぶちゃんにやられたんだっぺ。」女の子は
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