(トウリンゴ)を単にリンゴと呼ぶのは、実は当《とう》を得たものではないことを知っていなければならない。
[#「リンゴの図」のキャプション付きの図(fig46821_19.png)入る]
ミカン
ミカンすなわち蜜柑は、食用果実として名高く且《か》つ最もふつうのものであるが、世人《せじん》はそのミカンの実のいずれの部分を味わっているのか知らぬ人が多いのであろう。そしてそのミカンは、その毛の中の汁《しる》を味わっている、と聞かされるとみな驚いてしまうだろうが、実際はそうであるからおもしろい。もし万一ミカンの実の中に毛が生《は》えなかったならば、ミカンは食《く》えぬ果実としてだれもそれを一顧《いっこ》もしなかったであろうが、幸《さいわ》いにも果中《かちゅう》に毛が生《は》えたばっかりに、ここに上等果実として食用果実界に君臨《くんりん》しているのである。こうなってみると毛の価《あたい》もなかなか馬鹿《ばか》にできぬもので、毛頭《もうとう》その事実に偽《いつわ》りはない。
ミカンの属は学問上ではシトルス(Citrus)と称し、属中には多数の種類を含んでいる。日本にあるダイダイ、
前へ
次へ
全119ページ中98ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 富太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング