木/示」、第4水準2−14−51]である。
 元来《がんらい》、本当のリンゴは林檎であって、これはその実の直径およそ三センチメートル余りもない小さいもので、あえて市場へは出てこなく、日本では昔その苗木《なえぎ》がわが邦《くに》へ渡って今日|信州《しんしゅう》〔長野県〕あるいは東北地方にわずかに見るばかりである。元来《がんらい》日本の原産ではなけれども、これを西洋リンゴのアップルと区別せんがために和《わ》リンゴといわれている。すなわち日本リンゴの意である。
 アップルすなわち西洋リンゴは、明治の初年にはじめて西洋から伝わりて爾後《じご》しだいに日本に拡《ひろ》まり、今日《こんにち》では東北諸州ならびに信州からそれの良果が盛《さか》んに市場に出回《でまわ》り、果実店頭を飾《かざ》るようにまでなったのである。
 アップルを学名でいえば Malus pumila var. domestica であって、前の和《わ》リンゴは Malus asiatica である。元来《がんらい》リンゴは林檎(和リンゴ)の音であるから本当のリンゴをいう場合は何もいうことはないが、今日《こんにち》のように西洋リンゴ
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