を界《さかい》としてその内部が真の果実であって、この果実部はあえてだれも食わなく捨てるところである。そしてこの区切りと最外《さいがい》の外皮《がいひ》のところまでの間が人の食《しょく》する部分であるが、この部分は実は本当の果実(中心部をなせる)へ癒合《ゆごう》した付属物で、これは杯状《はいじょう》をなした花托《かたく》(すなわち花の梗《くき》の頂部《ちょうぶ》)であって、それが厚い肉部となっているのである。
これで見ると、このリンゴの実は本当の果実は食われなく、そしてただそのつきものの変形せる花托《かたく》、すなわち花梗《かこう》の末端《まったん》を食っていることになるが、しかしリンゴを食う人々は、植物学者かあるいは学校で教えられた学生かを除くのほかは、だれもその真相を知っているものはほとんどないであろう。
このリンゴは英語でいえばアップルである。今日《こんにち》の日本人はだれでもこれをリンゴといってすましているが、実をいうとこれはリンゴではなくて、すべからくそれをトウリンゴまたはオオリンゴ、あるいはセイヨウリンゴといわねばならぬものである。そして漢字で書けば苹果でありまた※[#「
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