ではあるが、これに引き換《か》えその白色四|片《へん》の苞《ほう》はたいせつな役目を勤《つと》めている。
すなわち目に着《つ》くその白い色を看板《かんばん》にして、昆虫を招いているのである。昆虫はこの白看板《しろかんばん》に誘《さそ》われて遠近から花に来《きた》り、花中《かちゅう》に立っている花軸《かじく》の花を媒助《ばいじょ》してくれるのである。けれども昆虫はただでは来《こ》なく、利益交換《りえきこうかん》の蜜《みつ》が花中にあるので、それでやって来《く》るのである。この草が群をなして密生《みっせい》している所では、草の表面にその白花が緑色の葉を背景に点々とたくさんに咲いていて、すこぶる趣《おもむき》がある。
このドクダミははなはだ抜き去り難《がた》く、したがって根絶《こんぜつ》せしめることはなかなか容易でなく、抜いても抜いても後《あと》から生《は》え出るのである。それもそのはず、地中に細長い白色地下茎《はくしょくちかけい》が縦横《じゅうおう》に通っていて、苗《なえ》を抜く時にそれが切れ、依然《いぜん》として地中に残り、その残りからまた苗《なえ》が生《は》えるからである。この地下
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