ものである。本品はシュウカイドウ科に属し、Begonia Evansiana Andr[#「Andr」は斜体]. の学名を有しているが、この Begonia 属のものは温室植物として多くの種類がある。みなその茎葉《けいよう》に酸味《さんみ》を含んでいるが、それは蓚酸《しゅうさん》である。
 秋海棠《しゅうかいどう》は宿根草本《しゅっこんそうほん》であるが、冬は茎《くき》も葉もなく、春に黒ずんだ地中のタマネ、すなわち球茎《きゅうけい》から芽が出て来る。ゆえに一度|栽《う》えておくと、年々生じて開花する。茎《くき》は立って六〇〜九〇センチメートルの高さとなり枝《えだ》を分《わ》かっている。葉は大形で葉柄《ようへい》を具《そな》え、茎《くき》に互生《ごせい》している。その葉面《ようめん》は心臓形で左右不同の歪形《わいけい》を呈《てい》し、他の植物の葉とはだいぶ葉形が異なっている。茎と共《とも》に質が柔《やわ》らかく、元来《がんらい》は緑色なれども、赤味を帯《お》びているから美しい。
 茎《くき》の上部に分枝《ぶんし》し、さらに小梗《しょうこう》に分かれて紅色《こうしょく》の美花《びか》を着《
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