片が花弁状をなしている)の内面は色が暗紫赤色《あんしせきしょく》を呈《てい》している。花内《かない》に多雄蕊《たゆうずい》と多雌蕊《たしずい》とがある。わが邦《くに》の学者はこの草を漢名の白頭翁《はくとうおう》だとしていたが、それはもとより誤りであった。この白頭翁《はくとうおう》はオキナグサに酷似《こくじ》した別の草で、それは中国、朝鮮に産し、まったくわが日本には見ない。ゆえに右日本のオキナグサを白頭翁《はくとうおう》に充《あ》てるのは悪い。
 さてこの草をなぜオキナグサ、すなわち翁草というかというと、それはその花が済《す》んで実になると、それが茎頂《けいちょう》に集合し白く蓬々《ほうほう》としていて、あたかも翁《おきな》の白頭《はくとう》に似ているから、それでオキナグサとそう呼ぶのである。この蓬々《ほうほう》となっているのは、その実の頂《いただき》にある長い花柱《かちゅう》に白毛《はくもう》が生じているからである。
 この草には右のオキナグサのほかになおたくさんな各地の方言があって、シャグマグサ、オチゴバナ、ネコグサ、ダンジョウドノ、ハグマ、キツネコンコン、ジイガヒゲ、ゼガイソウもそ
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