《こんにち》あえて見つからぬところから推《お》してみると、これはほんの狭《せま》い一地方に行われた名で、今ははやく廃《すた》れたものであろう。
 このマンジュシャゲ、すなわちヒガンバナ、すなわち石蒜《せきさん》は日本と中国との原産で、その他の国にはない。外国人はたいへんに球根植物を好くので、ずっと以前にこのマンジュシャゲの球根が、多数に海外へ輸出せられたことがあった。

[#「ヒガンバナの図」のキャプション付きの図(fig46821_14.png)入る]

     オキナグサ

 春に山地に行くと、往々《おうおう》オキナグサという、ちょっと注意を惹《ひ》く草に出逢《であ》う。全体に白毛《はくもう》を被《かぶ》っていて白く見え、他の草とはその外観が異っているので、おもしろく且《か》つ珍しく感ずる。葉は分裂《ぶんれつ》しており、株《かぶ》から花茎《かけい》が立ち十数センチメートルの高さで花を着《つ》けている。花は点頭《てんとう》して横向きになっており、日光が当たると能《よ》く開く。花の外面に多くの白毛が生じており、六|片《ぺん》の花片《かへん》(実は萼片《がくへん》であって花弁はなく、萼
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