れで右のように石蒜《せきさん》といわれている。
本種はわが邦《くに》いたるところに群生《ぐんせい》していて、真赤な花がたくさんに咲くのでことのほか著《いちじる》しく、だれでもよく知っている。毒草《どくそう》であるからだれもこれを愛植《あいしょく》している人はなく、いつまでも野の草であるばかりでなく、あのような美花《びか》を開くにもかかわらず、いつも人に忌《い》み嫌《きら》われる傾向を持っている。
とにかく、眼につく草であるゆえに、諸国で何十もの方言《ほうげん》がある。その中にはシビトバナ、ジゴクバナ、キツネバナ、キツネノタイマツ、キツネノシリヌグイ、ステゴグサ、シタマガリ、シタコジケ、テクサリバナ、ユウレイバナ、ハヌケグサ、ヤクビョウバナなどのいやな名もあるが、またハミズハナミズ、ノダイマツ、カエンソウなどの雅《みや》びな名もある。そしてその学名を Lycoris radiata Herb[#「Herb」は斜体]. といい、ヒガンバナ科に属する。右種名の radiata は放射状《ほうしゃじょう》の意で、それはその花が花茎《かけい》の頂《いただき》に放射状、すなわち車輪状をなして咲
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