》えても、能《よ》くできて花が咲く。宿根性草本《しゅっこんせいそうほん》で、地下茎《ちかけい》は横臥《おうが》している。茎《くき》は直立し少数の茎葉《けいよう》を互生《ごせい》し、初夏《しょか》の候《こう》、頂《いただき》に派手《はで》やかな大花《たいか》が咲く。葉は直立せる剣状《けんじょう》で白緑色《はくりょくしょく》を呈《てい》し、基部《きぶ》は葉鞘《ようしょう》をもって左右に相抱《あいいだ》き、葉面《ようめん》の中央には隆起《りゅうき》せる葉脈《ようみゃく》が現《あらわ》れている。花が了《お》わると果実ができ、熟《じゅく》してそれが開裂《かいれつ》すると、中の褐色《かっしょく》種子が出る。
 ハナショウブとは花の咲くショウブの意で、そしてその葉の大きさは、ちょうどショウブと同じくらいである。ところが元来《がんらい》、菖蒲と言う中国名、すなわち漢名《かんめい》は、実はしょせんショウブそのものではなく、ショウブは白菖と書かねば正しくない。そして菖蒲と書けば、本当はセキショウのことになる。このセキショウはショウブ属(Acorus)のものではあれど、ずっと小形な草で溪間《けいかん》に生じ
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