。そしてハナショウブを花菖蒲と書くのは、実は不正な書きかたで、ショウブは菖蒲から書いた名ではあれど、ショウブはけっして菖蒲ではない。
ハナショウブの花は、その構造はアヤメやカキツバタと少しも変わりはない。ただ花の器官に大小|広狭《こうきょう》、ならびに色彩《しきさい》の違いがあるばかりだ。すなわち最外《さいがい》の大きな三|片《ぺん》が萼片《がくへん》で、次にある狭《せま》き三片が花弁《かべん》である。三つの雄蕊《ゆうずい》は幅広き花柱枝《かちゅうし》の下に隠れて、その葯《やく》は黄色を呈《てい》しており、中央の一|花柱《かちゅう》は大きな三|枝《し》に岐《わ》かれて開き、その末端《まったん》に柱頭《ちゅうとう》があり、虫媒花《ちゅうばいか》であるこの花に来る蝶々《ちょうちょう》が、この柱頭へ花粉を着《つ》けてくれる。花下《かか》に緑色の一|子房《しぼう》があって、直立し花を戴《いただ》いている。子房には小柄《しょうへい》があり、その下に大きな二枚の鞘苞《しょうほう》があって花を擁《よう》している。
ハナショウブは、ふつうに水ある泥地《でいち》に作ってあるが、しかし水なき畑に栽《う
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