ないようなハナショウブ学会を設立すべきである、と私は提唱《ていしょう》するに躊躇《ちゅうちょ》しない。
 Iris 属中の各種中で、ハナショウブほど一種中(ワンスピーシーズ中)に園芸上の変わり品を有しているものは、世界中に一つもない。これは独《ひと》り日本の持つ特長である。なんとなれば、ハナショウブを原産する国は、日本よりほかにはないからである。実にハナショウブの品種は、何百通りもあるではないか。
 ハナショウブは、まったく世界に誇《ほこ》るべき花であるがゆえに、どこか適当な地を選んで一大花ショウブ園を設計し、少なくも十万平方メートルぐらいある園を設《もう》けて、各種類を網羅《もうら》するハナショウブを栽《う》え、大いに西洋人をもビックリさすべきである。いまや観光団が来るという矢先《やさき》に、こんな大規模のハナショウブ園を新設するのは、このうえもない意義がある。従来、東京付近にある堀切《ほりきり》、四ツ目などのハナショウブ園は、みな構《かま》えが小さくて問題にならぬ。
 花ショウブは、元来《がんらい》、わが邦《くに》の山野に自生している野《の》ハナショウブがもとで、それを栽培に栽培を
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