いう順序だろう。これらのユリは、日本でなるべくその球根を大きくなるように培養《ばいよう》して、その球根を輸出する。先方ではそれを一年作って、さらにその大きさを増さしめ、そして次年《じねん》に勢《いきお》いよく花を咲かせてその花を賞翫《しょうがん》する。花が咲いた後、弱った球根は捨てて顧《かえり》みない。
 ゆえに年々歳々《ねんねんさいさい》日本から断《た》えず輸入する必要があるので、この貿易は向こうの人の花の嗜好《しこう》が変わらぬ以上いつまでも続くわけで、日本はまことにまたと得がたい良い得意先を持ったものだ。また、良いユリをも持ったものだ。万歳万歳《ばんざいばんざい》。

[#「ユリの図」のキャプション付きの図(fig46821_12.png)入る]

     ハナショウブ

 ハナショウブは世界の Iris 属中の王様で、これがわが邦《くに》の特産植物ときているから、大いに鼻を高くしてよい。アメリカでは、花ショウブ会ができているほどなのであるが、その本国のわが邦《くに》では、たいした会もないのはまことに恥《は》ずかしい次第《しだい》であるから、大いに奮起《ふんき》して、世界に負け
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