リなどの種類がある。ウバユリというのは異彩《いさい》を放ったユリで、もとはユリ属(Lilium)に入れてあったが、私はこれをユリ属から独立させて、Cardiocrinum なる別属のものとしている。その葉はユリの諸種とは違い、広闊《こうかつ》なる心臓形で網状脈《もうじょうみゃく》を有し、花は一茎に数花横向きに開き、緑白色《りょくはくしょく》で左右相称状になっている。鱗茎《りんけい》の鱗片《りんぺん》もきわめて少なく、花が咲くとその鱗茎《りんけい》は腐死《ふし》し、その側に一、二の仔苗《しびょう》を残すにすぎない特状がある。この属のもの日本に二種、一はウバユリ、二はオオウバユリである。インド・ヒマラヤ山地方に産する偉大なウバユリ、すなわちヒマラヤウバユリもこの属に属する。
 輸出ユリとしては日本が第一で、年々たくさんな球根が海外へ出ていたが、戦争で頓挫《とんざ》していたけれども、これからふたたび、前日のような盛況《せいきょう》を見るであろうことは請《う》け合いで、わが邦《くに》園芸界のために、大いに祝《しゅく》してよろしい。その輸出ユリの第一はヤマユリ、次がテッポウユリ、次がカノコユリと
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