う》だからである。山地|向陽《こうよう》の草中に野生し、オニユリのごとき丹赤色《たんせきしょく》の花が咲き、暗褐色《あんかっしょく》の斑点《はんてん》がある。球根は食用によろしい。
 ヒメユリはその名の示すごとく可憐《かれん》なユリである。関西地方から九州にかけて山野に野生があるが、そう多くはない。茎《くき》は六〇〜九〇センチメートルに立ち、狭葉《きょうよう》を互生《ごせい》し、梢《こずえ》に少数の枝を分かちて、きわめて美麗《びれい》な真赤色の花が上向きに咲く。この一変種に、コヒメユリというのがある。茎《くき》は細長く花は茎末《けいまつ》に一、二|輪《りん》咲く。この品は野生はなく、まったく園芸品である。
 クルマユリは、その葉が車輪状《しゃりんじょう》をなしているので、この名がある。花は茎梢《けいしょう》に一花ないし数花|点頭《てんとう》して咲き、反巻《はんかん》せる花蓋面《かがいめん》に暗点がある。高山《こうざん》植物の一つであるが、羽前《うぜん》〔山形県〕の飛島《とびしま》に生《は》えているのは珍しいことである。
 右のほかヒメサユリ、タケシマユリ、タツタユリ、ハカタユリ、カサユ
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