ユリは、伊豆七島《いずしちとう》における八丈島《はちじょうじま》の南にある小島青ヶ島の原産で、日本のユリ中、最も巨大なものである。花は純白で香気《こうき》強く、実にみごとなユリで、この属中の王様である。球根もきわめて大きく、鱗片《りんぺん》も大形で肉厚く黄色を呈《てい》し、食用ユリとしても上位を占《し》むるものといってよろしい。
スカシユリは、ふつうに栽培《さいばい》して花を咲かせていて、その花色には赤、黄、樺《かば》〔赤みを帯《お》びた黄色〕などがある。花は上向きに咲き、花蓋片《かがいへん》のもとの方がたがいに透《す》いているので、スカシユリの名がある。諸国の海岸に野生《やせい》しているユリに、ソトガハマユリとも、テンモクユリとも、ハマユリとも、またイワトユリともいう樺色花《かばいろか》のユリがあるが、これは右スカシユリの原種である。東京付近では房州《ぼうしゅう》〔千葉県の南部〕、相州《そうしゅう》〔神奈川県〕、豆州《ずしゅう》〔伊豆半島と伊豆七島〕へ行けば得られる。
コオニユリは、オニユリに似て小さいというのでこの名があるが、一にスゲユリともいわれる。それは葉が狭長《きょうちょ
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