る。オニユリの花は通常|一重《ひとえ》であるが、時に八重咲《やえざ》きのものが見られ、これを八重天蓋《やえてんがい》と称するが、テンガイユリはオニユリの一名である。
ヤマユリはりっぱなユリであって、関東諸国に野生《やせい》し、また人家にも作られている。大きな花が咲き、その満開《まんかい》の時はよく香《にお》う。その花蓋片《かがいへん》は元来《がんらい》は白色だが、片面に褐赤色《かっせきしょく》の斑点《はんてん》がある。花蓋片《かがいへん》の中央|紅色《べにいろ》の深いものはベニスジユリと唱《とな》え珍重《ちんちょう》せられるが、これは園芸的の品である。ハクオウというのは、花蓋片《かがいへん》が白くて斑点《はんてん》なく中央に黄筋《きすじ》の通っているもので、これも園芸品である。
ヤマユリの球根は、食用として上乗《じょうじょう》なものである。ゆえに古《いにしえ》より、料理ユリの名がある。またその産地に基《もと》づいてヨシノユリ、ホウライジユリ、エイザンユリ、ウキシマユリの名がある。元来《がんらい》、ヤマユリの名は、ササユリの一名であるところのヤマユリの名と重複するので、今のヤマユリは
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