て直立し、狭長《きょうちょう》な葉がたくさんそれに互生《ごせい》している。茎《くき》の梢《こずえ》は多くは分枝《ぶんし》して花を着《つ》けているが、花はみな美しくて香気《こうき》のあるものが少なくない。そして花は上向《うわむ》きに咲くものもあれば、横向きに咲くものもあり、また下向きに咲くものもあって、みな小梗《しょうこう》を有している。
 花は花蓋《かがい》(萼《がく》、花弁同様な姿をしているものを、便宜《べんぎ》のため植物学上では花蓋《かがい》と呼んでいる)が六|片《ぺん》あるが、それが内外二列をなしており、その外列の三片が萼片《がくへん》であり、内列の三片が花弁である。そしてそのもとの方の内面には、よく蜜《みつ》が分泌《ぶんぴつ》せられているのが見られる。六本の雄蕊《ゆうずい》があって、おのおのが花蓋片《かがいへん》の前に立っており、長い花糸《かし》の先にはブラブラと動く葯《やく》があって、たくさんな花粉を出している。この花粉には色があって、それが着物に着《つ》くと、なかなかその色が落ちないので困る。ゆえに、人によりユリの花を嫌《きら》うことがある。
 花の底には一つの緑色の子房《
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