げに花が咲き、それに風が当たるとその花が揺《ゆ》れるから、それでユリというのだ、といっていることがある。
ユリの諸種はみな宿根草《しゅっこんそう》である。地下に鱗茎《りんけい》(俗にいう球根)があって、これが生命の源《みなもと》となっている。すなわち茎葉《けいよう》は枯《か》れても、この部はいつまでも生きていて死なない。
右、鱗茎《りんけい》は白色、あるいは黄色の鱗片《りんぺん》が相重《あいかさ》なって成《な》っているが、この鱗片《りんぺん》は実は葉の変形したものである。そして地中で養分を貯《たくわ》えている役目をしているから、それで多肉《たにく》となり、多量の澱粉《でんぷん》を含んでいる御蔵《おくら》をなしているが、それを人が食用とするのである。右の鱗片が相擁《あいよう》して塊《かたま》り、球をなしているその球の下に叢生《そうせい》して鬚状《ひげじょう》をなしているものが、ユリの本当の根である。そしてなお鱗茎《りんけい》から出ている一本の茎《くき》にも、その地中部には真の根が横出《おうしゅつ》して生《は》えている。
茎《くき》は鱗茎《りんけい》、すなわち球根から一本|出《い》で
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