がって強力な種子が生じ、子孫繁殖《しそんはんしょく》には最も有利である。
植物でも自家受精、すなわち自家結婚だと自然種子が弱いので、そこで他家受精すなわち他家結婚して強壮《きょうそう》な種子を作ろうというのだ。植物でこんな工夫《くふう》をしているのはまことに感嘆《かんたん》に値《あたい》する。今それを人間にたとうれば、同族結婚を避《さ》けて他族結婚をしたこととなる。実際|縁《えん》の近い人同士の結婚はあまり有利でなく、これに反して縁の遠い人同士の結婚が有利である。それゆえイトコ同士の結婚などはあまり褒《ほ》むべきものではなく、強健《きょうけん》な子供を欲《ほ》しいと思えば、縁類でない他の家から嫁をもらうべきである。前述のとおりサクラソウでさえ、自家結婚を避けて他家結婚を歓迎《かんげい》しているではないか。言い古した言葉だが、「人にして草に如《し》かざるべけんや」である。
日本にはサクラソウ属の種類がおよそ三十種ばかりもあるが、その中で一番りっぱで大きな形のものはクリンソウで、これは世界中でも有名なものである。温室内にあるサクラソウ類には中国産のものが多く、シナサクラソウ、オトメザク
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