らかくて皺《しわ》がある。四月ごろ花茎《かけい》が葉よりは高く立ち、茎頂《けいちょう》に繖形《さんけい》をなして小梗《しょうこう》ある数花が咲く。花下《かか》に五|裂《れつ》せる緑萼《りょくがく》があり、花冠《かかん》は高盆形《こうぼんけい》で下は花筒《かとう》となり、平開《へいかい》せる花面《かめん》は五|片《へん》に分かれ、各片の頂《いただき》は二|裂《れつ》していて、その状すこぶるサクラの花に彷彿《ほうふつ》している。花の直径はおよそ二センチメートルばかりで、花色は紅紫色《こうししょく》であるが、たまに白花のものに出逢《であ》う。花筒《かとう》内には五|雄蕊《ゆうずい》と一|雌蕊《しずい》とがあって、雌蕊のもとに一|子房《しぼう》がある。
このサクラソウの園芸的培養品にはおよそ二、三百の変わり品があって、みなこれまでの熱心な園芸家により、苦心して作り出されたものである。これは世界中に類のないもので、大いにわが邦《くに》の誇《ほこ》りとするに足《た》る花である。
ここに最も興味のあることは、このサクラソウ(同属の他の種も同様)の花には二様の差があって、それが株によって異なってい
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