んい》のために飲用《いんよう》するセンブリは、一《いつ》にトウヤクともいい、やはりこのリンドウ科に属すれど、これはリンドウ属のものではなく、まったく別属のもので、その学名を Swertia japonica Makino[#「Makino」は斜体] といい、効力ある薬用植物として『日本薬局方』に登録せられている。秋に原野に行けば、採集ができる。

[#「リンドウの図」のキャプション付きの図(fig46821_05.png)入る]

     アヤメ

 アヤメといえば、だれでもアヤメ科中の Iris 属のものと思っているでしょう。それもそのはず、今日《こんにち》ではアヤメと呼べば一般にそうなっているからだ。しかし厳格にいえば、このアヤメはまさにハナアヤメといわねばならぬものであった。なんとなれば、一方に本当のアヤメがあったからだ。とはいえ、この本当のアヤメの名は、実は今日ではすでに廃《すた》れてそうはいわず、ただ古歌《こか》などの上に残っているにすぎない運命となっているから、そう心配するにも及《およ》ぶまい。
 右に古歌《こか》といったが、その古歌とはどんな歌か、今|試《こころ》みに数
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