は擬対生《ぎたいせい》し、あるいは擬輪生《ぎりんせい》する。
 秋に茎《くき》の上部|分枝《ぶんし》し、小枝端《しょうしたん》に五|裂《れつ》せる鐘形花《しょうけいか》を一|輪《りん》ずつ着《つ》け、大きな鮮紫色《せんししょく》の美花《びか》が咲くが、栽培品には二重咲《ふたえざ》き花、白花、淡黄花《たんおうか》、絞《しぼ》り花、大形花、小形花、奇形花がある。そしてその蕾《つぼみ》のまさに綻《ほころ》びんとする刹那《せつな》のものは、円《まる》く膨《ふく》らみ、今にもポンと音して裂《さ》けなんとする姿を呈《てい》している。
 花中に五|雄蕊《ゆうずい》と五|柱頭《ちゅうとう》ある一|花柱《かちゅう》とがあるが、この雄蕊《ゆうずい》は先に熟《じゅく》して花粉《かふん》を散らし、雌蕊《しずい》に属する五柱頭は後に熟《じゅく》して開くから、自分の花の花粉を受けることができず、そこで昆虫の助けを借りて、他の花の花粉を運んでもらうのである。つまり桔梗花《ききょうか》は、自家結婚ができないように、天から命ぜられているわけだ。植物界のいろいろな花には、こんなのがザラにある。花を研究してみると、なかなか
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