草木の栄枯盛衰《えいこせいすい》を観《み》て、人生なるものを解《かい》し得たと自信している。
 これほどまでも草木《くさき》は人間の心事《しんじ》に役立つものであるのに、なぜ世人《せじん》はこの至宝《しほう》にあまり関心を払《はら》わないであろうか。私はこれを俗に言う『食わず嫌《ぎら》い』に帰《き》したい。私は広く四方八方の世人《せじん》に向こうて、まあ嘘《うそ》と思って一度味わってみてください、と絶叫《ぜっきょう》したい。私はけっして嘘言《きょげん》は吐《は》かない。どうかまずその肉の一臠《いちれん》を嘗《な》めてみてください。
 みなの人に思いやりの心があれば、世の中は実に美しいことであろう。相互《そうご》に喧嘩《けんか》も起こらねば、国と国との戦争も起こるまい。この思いやりの心、むずかしく言えば博愛心、慈悲心、相愛心があれば世の中は必ず静謐《せいひつ》で、その人々は確《たし》かに無上の幸福に浴《よく》せんこと、ゆめゆめ疑いあるべからずだ。
 世のいろいろの宗教はいろいろの道をたどりてこれを世人《せじん》に説《と》いているが、それを私はあえて理窟《りくつ》を言わずにただ感情に訴《う
前へ 次へ
全119ページ中117ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 富太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング