赤色《しんせきしょく》を呈《てい》しており、きわめて美しい特徴《とくちょう》を現《あらわ》している。

[#「シャクヤクの図」のキャプション付きの図(fig46821_02.png)入る]

     スイセン

 スイセンは水仙を音読《おんどく》した、そのスイセンが今日本の普通名となっているが、昔はわが邦《くに》でこれを雪中花《せっちゅうか》と呼んだこともあった。元来《がんらい》、水仙《すいせん》は昔中国から日本へ渡ったものだが、しかし水仙の本国はけっして中国ではなく、大昔遠く南欧《なんおう》の地中海地方の原産地からついに中国に来《きた》り、そして中国から日本へ来たものだ。中国ではこの草が海辺を好んでよく育つというので、それで水仙と名づけたのである。仙は仙人《せんにん》の仙で、この草を俗を脱している仙人《せんにん》に擬《なぞら》えたものでもあろうか。
 水仙はヒガンバナ科に属して、その学名を Narcissus Tazetta L[#「L」は斜体]. というのだが、この種名の Tazetta はイタリア名の小皿《こざら》の意で、すなわちその花中《かちゅう》の黄色花冕《おうしょくかべん
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