ん》で、その根を薬用に供《きょう》する。春に根頭《こんとう》から勢《いきお》いのよい赤い芽を出し、見てまことに気持がよい。充分《じゅうぶん》成長すると、高さはおよそ九〇センチメートル内外に達し、その直立せる茎《くき》は通常まばらに分枝《ぶんし》する。葉は茎《くき》に互生《ごせい》し、再三出式に分裂している。各|枝端《したん》に一花ずつ開き、直径はおよそ一二センチメートル内外もあろう。花下《かか》に五|片《へん》の緑萼《りょくがく》があるが、蕾《つぼみ》の時には円《まる》く閉じている。花弁《かべん》は平開し、およそ十|片《ぺん》内外もあるが、しかし花容《かよう》、花色|種々多様《しゅじゅたよう》で、何十種もの園芸的変わり品がある。花心《かしん》に黄色の多雄蕊《たゆうずい》と、三ないし五の子房《しぼう》がある。
 芍薬《しゃくやく》の姉妹品《しまいひん》で、わが邦《くに》の山地に見る白花品《はっかひん》は、ヤマシャクヤクで、その淡紅花品《たんこうかひん》はベニバナヤマシャクヤクである。花は芍薬に比べるとすこぶる貧弱だが、その果実はみごとなもので、熟《じゅく》して裂《さ》けると、その内面が真
前へ 次へ
全119ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 富太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング