仲買人《なかがいにん》が買って地下室に入れ、数日も置くとはじめて黄色に熟《じゅく》するので、それからそれが市場の売店へ氾濫《はんらん》し一般の人々を喜ばせたものだったが、一朝《いっちょう》バナナの宝庫の台湾が失われた後は、前日のバナナ盛況《せいきょう》を見ることはできなくなってしまった。
[#「バナナの図」のキャプション付きの図(fig46821_21.png)入る]
オランダイチゴ
オランダイチゴは今日《こんにち》市場では、単にイチゴと呼んで通じている。けれども単にイチゴでは物足《ものた》りなく、且《か》つ他のイチゴ(市場には出ぬけれど)とその名が混雑する。人によっては草苺《くさいちご》と呼んでいれど、これも別にクサイチゴがあるから名が重複して困る。オランダイチゴの名は回《まわ》りくどくて言いにくいし、他の名は混雑、重複するし困ったものだ。あるいは西洋イチゴといってもよかろうが、いっそ英語のストローベリ(Strawberry)で呼ぶかな、それがご時勢《じせい》向きかもしれない。
このオランダイチゴをむずかしく学名で呼ぶとすれば、それは Fragaria chilo
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