右属名の Helianthus は、これまた同じく Sunflower と同義で日輪花《にちりんか》を意味し、種名の annuus は一年生植物の義である。なぜこの花を日輪《にちりん》、すなわち太陽にたとえたかというと、あの大きな黄色の花盤《かばん》を太陽の面とし、その周辺に射出《しゃしゅつ》している舌状花弁を、その光線に擬《なぞら》えたものだ。
 中央に広く陣取《じんど》って並《なら》んでいる管状《かんじょう》小花は、その平坦《へいたん》な花托面《かたくめん》を覆《おお》い埋《う》め、下に下位子房《かいしぼう》を具《そな》え、花冠《かかん》は管状をなして、その口五|裂《れつ》し、そして管状内には集葯《しゅうやく》的に連合した五|雄蕊《ゆうずい》があり、中央に一本の花柱《かちゅう》があって右の葯《やく》内を通り、その柱頭《ちゅうとう》は二|岐《き》している。花の後《のち》には子房《しぼう》が成熟して果実となり、果中に一種子があり、種皮の中には二|子葉《しよう》を有する胚《はい》がある。春にこの種子を播《ま》けば能《よ》く生ずる。はじめ緑色の二枚の子葉《しよう》が開展し、その中央から茎《くき》が出て葉を着《つ》ける。そしてその胚には油を含《ふく》んでいる。
 茎《くき》は巨大で、高さが二メートル以上にも達し、あたかも棒のようである。
 葉は広くて、長葉柄《ちょうようへい》を具《そな》え、茎に互生《ごせい》しており、広卵形《こうらんけい》で三大脈を有して、葉縁《ようえん》に粗鋸歯《そきょし》があり、茎《くき》と共《とも》にざらついている。茎《くき》の頂《いただき》に一花あるものもあれば、また分枝《ぶんし》してその各|枝端《したん》に一|輪《りん》ずつの花を着《つ》けるものもある。また品種によって花に大小があり、その大なるものは直径およそ二十センチメートルばかりもあろう。
 このヒマワリの花は、他のキク科植物と同じく集合花で、そのおのおのを学問上で小花《フロレット》と称する。すなわち、この小花が集まって一輪の花を形作っている。こんな集合花を、植物学上で頭状花《とうじょうか》と称する。キク科の花はいずれもみな頭状花である。つまり寄《よ》り合い世帯《せたい》、すなわち一の社会を組み立ている花である。そしてこの寄り合い世帯には、分業が行われてたいへんにこの花に利益をもたらし、そ
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