汲撃s rather stout, with acerose branches, pale−pubescent. Nuts 3−together in each bur, brown, 23−30 mm. long, 25−36 mm. broad, 13−30 mm. thick, very shortly cuspidate at the apex, rounded or truncate−rounded and white adpressed−pubescent towards the top. Seed−coats easily separate from the embryo, which is pale−yellow and sweet in teste. ― 〔Bo_shi−guri〕[#「〔Bo_shi−guri〕」は斜体].) と極めた。この一本が今私の庭に健全に成長している。その栗毬は大形で堅果も大きい。
支那栗すなわちアマグリは実の渋皮がむけやすく味が甘いのが特徴である。日本のクリとこの支那栗とをかけあわせてその間種をつくってみたら利益があることと思うが、もうどこかでその見本樹が出来ているかも知れない。
日本のクリはその学名は Castanea crenata Sieb[#「Sieb」は斜体]. et Zucc[#「et Zucc」は斜体]. で、西洋での俗名は Japanese Chestnut である。そしてクリの語原は黒い意味でその実の色から来たもんだ。これは日本の特産で中国にはない。ゆえに中国名の栗の字をもって日本のクリそのものとすることは出来なく、クリはいつまでもクリで、中国の栗の字をもって日本のクリにあてることは正しくない。しかるに従来の学者はそんなイキサツのあることは知らないから、栗の字を日本のクリへ適応して平気でいるが、それは全く勘違いだから、栗の字を日本のクリから絶縁さすべきだ。そして日本のクリ仮名でクリと書きかつそう呼べばそれでよい。
これに類したことは松の字でも見られる。元来松は中国特産のシナマツを指したもので日本のマツの名ではないから、厳格にいえば日本のマツへ対して書くべき文字ではない。日本のマツには書くべき漢名は一つもないから、マツはマツで押し通すよりほかに途はない。また黒松といい赤松というのもじつはシナマツの一品であって、日本のクロマツ、アカマツへ適用すべき漢名ではない。日本のマツは一切中国にないから従って中国名がないのが当たりまえだ。
アスナロノヒジキ
アスナロとはアスナロウで明日《アス》ヒノキになろうといって成りかけてみたが、ついに成りおうせなかったといわれる常緑針葉樹だ。相州の箱根山や、野州の日光山へ行けば多く見られる。この樹はマツ科に属し Thujopsis dolabrata Sieb[#「Sieb」は斜体]. et Zucc[#「et Zucc」は斜体]. の学名を有するが、もとの学名は Thuja dolabrata L[#「L」は斜体]. fil[#「fil」は斜体]. であった。そしてこの種名の dolabrata は斧状の意で、それは斧の形をして枝に着いているその葉の形状に基づいたものだ。
この樹の枝にはアスナロノヒジキと呼んで、一種異様な寄生菌類の一種が着いて生活していて、その学名を Caeoma deformans Tubeuf[#「Tubeuf」は斜体] と称するが、その最初の学名は Uromyces deformans Berk[#「Berk」は斜体]. et Ber[#「et Ber」は斜体]. であった。また白井光太郎《しらいみつたろう》博士は Caeoma Asunaro Shirai[#「Shirai」は斜体] の学名を設けたがこれは不用になった。すなわちこの種名の deformans は畸形あるいは不恰好というような意味で、それはその菌体の形貌に基づいたものである。そしてそれをアスナロノヒジキと呼んだが、しかしヒジキの名はあっても海藻のヒジキのように食用になるものではなく、単にその姿をヒジキに擬ぞらえたものに過ぎないのである。
さてこの寄生菌そのものが初めて書物に書いてあるのは岩崎灌園《いわさきかんえん》の『本草図譜《ほんぞうずふ》』であろう。すなわちその書の巻九十にアスナロウノヤドリギとしてその図が出ている。けれどもその産地が記入してない。が、しかしそれは多分野州日光山かあるいは相州箱根山かの品を描写したものではないかと想像せられる。
明治の年になって東京大学理科大学植物学教室の大久保三郎君(大久保一翁氏の庶子でかつて英国へ遊学し、帰朝して矢田部良吉《やたべりょうきち》教授の下で助教授を勤めていた穏やかな人だったが
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