に縊れていて、その両方に各一個ずつの卵子がある。今これを上から見ると、そこに四つの体《からだ》をなして行儀よく並んでいる。
 右の子房が熟すると、元来は果実分類上の※[#「くさかんむり/朔」、第3水準1−91−15]となる。そしてその四分体、その内部に各一個の種子を含んだ四分体がばらばらになって宿存萼の底から出て来て地面に落ちる。すなわちこの四分体がいわゆるシソのタネ、エゴマのタネである。植物学者はこの種子様のものを小痩果(Nucule)あるいは小堅果(Nutlet)といっている。
 シソもエゴマも元来は同種異品のものであるが、その用途は違っている。すなわち紫蘇は西洋ではその葉の紫色を愛でて観葉植物となっているが、日本ではよい香のあるその葉がアオジソとともに香味料食品となっている。エゴマ(荏)はそのタネから搾った油を荏の油と称し、合羽、傘などに使用し、また食料とすることもある。しかし胡麻のタネは本当の純種子である、そしてゴマには通常黒ゴマ、白ゴマ、金ゴマがある。

  麝香草の香い

 諸地の山中にはジャコウソウと称する宿根草があって、クチビルバナ科に属し、夏に淡紅紫色の大形の唇形花を茎梢葉腋の短き聚繖梗にひらき、茎は叢生直立し方形で高さ三尺内外もあり、葉は闊《ひろ》くして尖り対生する。その学名を Chelonopsis moschata Miq[#「Miq」は斜体]. と称する。
 小野蘭山の口授した『本草記聞《ほんぞうきぶん》』芳草類、薫草(零陵香)の条下に「サテ此ノ本条[牧野いう、薫草零陵香を指す]ノコト前方ヨリ山海経ノ説ニヨリテ麝香草ヲ当ツ、ソレモトクト当ラズ、是モ貴船ニ多シ宿根ヨリ生ズ一名ワレモカウ(地楡又萱ノ類ニ同名アリ)苗ノ高サ一尺五六寸斗紫茎胡麻葉ニ似タリ葉末広シ細長クアラキ鋸歯アリ方茎対生八九月頃葉間ヨリ一寸程ノ花下垂シテ生ズ薄紫也一茎ニ一輪胡麻ノ花形ニ似テ大也桐ノ花ヨリ小也花※[#「くさかんむり/亭」、第4水準2−86−48]余程大ナル鈴ノ形也夢溪筆談ニモ鈴子香鈴々香ノ一名アリ花ノ形ニヨリテ名ヅクル也鈴子ノアルヲ択ムベシトアリ風ニツレテ麝香ノ匂ヒアリ、チギリテハ却テ臭気アリ時珍ノ説ノ如ク土零陵香ニ当ルヨシ」と述べ、また蘭山の『本草綱目啓蒙』巻之十、芳草類の薫草零陵香の条下には「又山海経ノ薫草ヲジヤカウサウニ充ル古説ハ穏カナラズ、ジヤカウサウハ生ノ
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