人が指呼した方角を見上げると、西側が絶壁となって谷へ陥ち込んでいる峻険な連山が望まれた。約半時間の後その頂上に一行は立った。
オッペルトには生れてはじめて見る絶勝だった。山腹の森蔭に村があって、やがてぞろぞろと出てきた村人たちから、難なく問題の場所を教わることができた。
(朝鮮の史料では伽洞民衆は武装した洋夷一行を見て守衛とともに逃散したはずだ。が、ともかくオッペルトについてゆこう)。
非常に奥まった場所だった。ところが、案に相違したのは王陵の物々しく厳重な構造である。「聖骨」は単に石造の建築物中に納められているものとばかり想像して来たのに、これはまた四周一面頑丈な土壁で衛《まも》られていた。ともかくまず壁の一部を壊して入口を作る仕事にとりかからなければならない。もとよりそんなはずではなかったから道具の準備もないので、村から「撰んで」きた鍬《くわ》か何かで、とりかかった。
壁破りの仕事だけで、五時間も費した!
と、今度は、もっともっと大きな困難に出くわした。せっかく壁を壊してみたら、予期した通路どころか、大きな切石が背中を見せて塞がっていたというのだ。
石を取除くにはあとまだ
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