暁、例の「護衛隊」を率いて小艇に乗換える。河幅は約半マイル、平野で、村々が指呼できる。村人がいぶかしそうに土手にならぶ。グレタ号は中流に位置を保ちながら、三十マイルを四時間で上陸予定地へ着くつもりのところ、午前十一時までかかった。
上陸する。小村を支障なく通過。樹影一つない平野を過ぎると、やがてうるわしい丘陵地帯になって、相当な町に出た。外郭をそっと通過するつもりが、運悪く一隊の朝鮮兵と出逢ってしまった。「恫喝《どうかつ》」したら兵士は逃散したが指揮官だけは決死の形相で道をはばんでいる。今度は朝鮮語のできるフェロン師の番だ。うまく説教したと見えて、やがて指揮官は、おりがら日射病で倒れた「護衛隊」の一人のために、山駕《やまかご》を心配するという変り方だった。それはよいとして、すでに大変な予算狂になっているのが発見された――厳密なスケジュールによると少くとも午後一時には目的地に着いているはずが、今その時刻になってしかもやっと半途、加えるにこれから先きは上り坂の難路ときている!
だが、四辺はいよいよ美わしく、二、三の牧夫以外には人家も認められなかった。ようやく五時前になって、ガイドの朝鮮
前へ
次へ
全29ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
服部 之総 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング