ちの失敗を説明するための伏線になっている。
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「なによりも、はっきりした御返事をいただく前に御考え願いたいのは、この一事から生ずる利益は大にしては全世界、小にしては朝鮮国民自体のものであるという点です。そして、これに較べたら摂政個人の被害なぞは、物の数でもないという点です…………」
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ジェンキンスが公判廷で撥陵事件と「条約締結」との関係を問われたとしても、これ以上の答弁は不可能だったにちがいない。
上海出発は「ある天気晴朗なる朝」だった。汽船「チャイナ号」には船長メラー、フェロン師、その朝鮮人の同志たち、「余」および「余に最も有用な援助を与えてくれたアメリカ紳士I氏」以上「幹部」のほかに、十二、三名のヨーロッパ人水夫、二十五人のマニラ人および数名のシナ人が乗組んだ。本船「チャイナ号」のほかに水深二フィートの箇所まで航行しうる小汽船「グレタ」を曳航した理由は、いうまでもあるまい。
長崎に寄港した点まではオッペルトの『紀行』には全然省略されている。やや荒天だったため、かっきり大潮時までに到着する予定が数時間おくれて、真夜半になった。翌早
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