めでさえあれば、開国ぐらい何でもあるまい!
 だが、これに続くフェロン師の言葉は、今度はあまりにも実際的であり、科学的であり、立派な探偵小説ものだ。
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「何人の生命にも別条がないと信ずればこそ、あなたの御助力を拝借したいのです。しかしまた何等の困難もないとはいえません。ことに、例の物が納っている場所の問題です。そこへ行くには、プリンス・ジェロム湾のとある河口を汽船で三十マイルも遡らなきゃなりません。ところが、その河は、一ヶ月のうち大潮の三十時間しか、役に立たない、というのも、この三十時間だけは最深約三フィートの水量がありますけれども、そのほかの時は殆んどカラカラに乾上るのです。
 問題の場所は、上陸地点から徒歩でたっぷり四時間、途中、相当人口のある町を一つ通過しなきゃなりません。
 で、行きも帰りも、大潮の三十時間しか使えないのですから、牙山湾の河口へは、潮時かっきりに、到着している必要があります」。
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 冒険家は話上手だ。話上手であることが冒険家のための資格の一つである。フェロンが喋ったにせよ、オッペルトが書いたにせよ、ともかくこれが、の
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