うというのですけれども、しかし何もひどい危害を加えるというのではありません。国内の誰一人、生命財産を危なくする心配はないのです。もっとも、かなりの護衛兵は必要ですが、これだって、実際上の危険を慮《おもんぱか》ってのことではなく、つまらない邪魔を避けるためです。」
[#ここで字下げ終わり]
このようなフェロン師の科白《せりふ》が、まだまだ数頁にわたって書かれているのだが、そもそものプランはフェロン師と「わたくしの朝鮮人の友人」との間でできたことになっている。朝鮮人というのは、ジェンキンスが総領事セワードに向って朝鮮からの特使だといって報告した者で、実はフェロン一行を朝鮮から救い出した数名の朝鮮人信者団である。漁民だったと伝えられている。で、そのプランというのは――
迷信深い摂政(大院君)の家に伝わる聖骨があって、ある秘密の場所に護持されている。この聖骨のおかげで彼とその一族の幸福が保証されているものと信ぜられているので、これにたいする尊崇は異常なものだ。こいつを奪ってしまえば、ほとんど絶対権を取ったも同様、首都漢城を陥れたのも同然である。摂政は唯唯諾諾《いいだくだく》、聖骨取戻しのた
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